FP3級試験で出題される「年金と税金」の重要ポイントと例題についてまとめました。
厚生年金と国民年金の違い
まずはざっくりと、厚生年金と国民年金の違いを整理すると以下のとおりです。
| 項目 | 厚生年金 | 国民年金(基礎年金) |
|---|---|---|
| 対象者 | 会社員・公務員 | 自営業・フリーランス・学生 |
| 保険料 | 収入比例(標準報酬 × 18.3%を労使折半) | 定額(約1.7万円/月) |
| 事業主負担 | あり(会社が半分負担) | なし(全額自己負担) |
| 年金の種類 | 基礎年金+報酬比例年金 | 基礎年金のみ |
| 将来の年金額 | 収入と加入期間で変動(高収入ほど多い) | 一律(満額:約80万円/年) |
| 加入義務 | 会社に勤めると自動加入 | 20〜60歳の全国民 |
| 給付の厚さ | 手厚い(障害・遺族年金も高め) | 最低限の保障 |
| 支払い方法 | 給料天引き | 自分で納付 |
| 未納リスク | ほぼなし | 発生しやすい |
| リターン(支払額に対する戻り) | 非常に高い:会社が半分負担するため、実質“倍の掛金”で運用される。長生きすれば支払額を大きく超えるケースが多い | 高い:満額受給なら、支払総額より受取総額が大きくなることが多い(長生きほど有利) |
国民年金の保険料は定額 (約1.7万円/月)、受給額は長生きするほど有利です。 障害基礎年金・遺族基礎年金も含まれます。
厚生年金のは、会社が保険料の半分を負担するため、自分が払った額の“2倍”が積み立てられる構造です。収入比例なので、働くほど受給額が増えます。 障害・遺族年金も手厚く、総合的な保障が大きいです。
「国民年金」と「厚生年金」のリターン
「国民年金」と「厚生年金」のリターンを試算すると以下のようになります。
| 制度 | 年収 | 本人負担総額 | 受取総額(20年) | 回収率(本人負担ベース) | 実質リターン(会社負担込み) |
|---|---|---|---|---|---|
| 国民年金 | ― | 約816万円 | 約1600万円 | 196% | ―(会社負担なし) |
| 厚生年金 | 400万円 | 約1440万円 | 約2000万円 | 139% | 約278%(会社負担を含めると掛金は実質2倍) |
| 厚生年金 | 500万円 | 約1830万円 | 約2200万円 | 120% | 約240% |
| 厚生年金 | 700万円 | 約2540万円 | 約2800万円 | 110% | 約220% |
前提条件
- 加入期間:40年
- 受給期間:20年
- 国民年金は定額保険料で計算
国民年金保険料の計算
| 項目 | 計算過程 | |
|---|---|---|
| 本人負担総額 | 6.800円 × 12ヶ月 × 40年 = 約816万円 | |
| 受取総額 | 月額約6.7万円 × 12ヶ月 × 20年 = 約1600万円 | |
| 回収率 | 1600万円 ÷ 816万円 ≒ 196% | |
| 実質リターン | ―(会社負担なし) |
厚生年金の計算
保険料率:約18.3%(2025年時点)
→ 会社と本人が折半(9.15%ずつ)
→ 年収 × 9.15% × 40年 = 本人負担総額
→ 年収 × 18.3% × 40年 = 会社負担込み総額
– **受取総額:年金月額 × 12ヶ月 × 20年
→ モデルケースに基づく概算(実際は加入期間や平均報酬額により変動)
年収400万円の場合
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 本人負担総額 | 400万円 × 9.15% × 40年 = 約1440万円 |
| 会社負担込み総額 | 400万円 × 18.3% × 40年 = 約2880万円 |
| 受取総額 | 月額約8.3万円 × 12ヶ月 × 20年 = 約2000万円 |
| 回収率 | 2000万円 ÷ 1440万円 ≒ 139% |
| 実質リターン | 2000万円 ÷ 2880万円 ≒ 約278%(掛金の2倍で計算) |
年収500万円の場合
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 本人負担総額 | 500万円 × 9.15% × 40年 = 約1830万円 |
| 会社負担込み総額 | 500万円 × 18.3% × 40年 = 約3660万円 |
| 受取総額 | 月額約9.2万円 × 12ヶ月 × 20年 = 約2200万円 |
| 回収率 | 2200万円 ÷ 1830万円 ≒ 120% |
| 実質リターン | 2200万円 ÷ 3660万円 ≒ 約240% |
年収700万円の場合
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 本人負担総額 | 700万円 × 9.15% × 40年 = 約2540万円 |
| 会社負担込み総額 | 700万円 × 18.3% × 40年 = 約5080万円 |
| 受取総額 | 月額約11.7万円 × 12ヶ月 × 20年 = 約2800万円 |
| 回収率 | 2800万円 ÷ 2540万円 ≒ 110% |
| 実質リターン | 2800万円 ÷ 5080万円 ≒ 約220% |
過去20年間で年金リターンはどう変化したか
結論から言うと、過去20年間で「年金のリターン(=支給額 ÷ 保険料負担)」は、国民年金・厚生年金ともに “確実に低下” しています。理由は、支給額が減り続けている一方で、保険料負担は上昇し続けている**ためです。
| 項目 | 国民年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|
| 給付の仕組み | 定額 | 報酬比例 |
| 賃金の影響 | 受けない | 受ける(大きい) |
| マクロ経済スライドの影響 | 小さめ | 大きめ |
| 減少幅 | 小さい | 大きい |
国民年金(老齢基礎年金)の推移
20年間で約1.2%減少(767円減)しています。
- 2000年度:月額 67,017円
- 2023年度:月額 66,250円(67歳以下)
物価は上がっているのに、国民年金の支給額はむしろ減っているため、実質的なリターンはさらに低下しています。
厚生年金(老齢厚生年金+基礎年金)の推移
20年間で約19%(約3.3万円)しています。
- 2000年度:平均 176,953円/月
- 2021年度:平均 143,965円/月
これは非常に大きな減少で、平均給与の伸び悩み+マクロ経済スライドによる調整が原因とされています。
マクロ経済スライドとは
厚生年金の増え方をゆっくりにして、制度を長持ちさせる仕組みです。厚生年金の改定率(毎年どれだけ増えるか)は以下の計算式で求められます。
$$ 年金改定率 = 物価(または賃金)の変動率 – スライド調整率 $$
$$ スライド調整率 = 少子化による現役人口の減少率 + 平均寿命の伸び $$
つまり、①支える人が減るほど ②長生きするほどスライド調整率が大きくなり、年金の増え方が抑えられます。
例えば、物価が 2% 上がった年にスライド調整率が 1% なら、年金改定率は 1% となり、物価ほどは増えません。
$$ 年金改定率 = 2\% – 1\% = 1\% $$
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国民年金の減少が少ない理由
厚生年金と比べて国民年金(老齢基礎年金)の「減少が少ない理由」は、制度の構造そのものにあります。厚生年金と比べて“守られやすい仕組み”になっているため、支給額の下がり方が小さく見えます。
理由① 定額給付で変動幅が小さい
国民年金は、「加入期間 × 定額」で決まるシンプルな制度です。給付額は「満額 × 加入月数」で決まるため、賃金水準の影響を受けない (給付額のベースが毎年大きく動かない)という特徴があります。
理由② 賃金の下落の影響を受けない
厚生年金は「平均標準報酬(=現役時代の給与)」に連動します。日本はこの20年で平均賃金がほぼ伸びていないため、
厚生年金の支給額は大きく下がりました。一方、国民年金は賃金に連動しないため、賃金停滞の影響を受けません。
理由③ マクロ経済スライドの影響が相対的に小さい
マクロ経済スライドは国民年金にも適用されますが、
- 物価上昇が小さい年
- 名目下限(年金は名目で下げない)
- キャリーオーバーで翌年に回す仕組み
などが働くため、実際の減額幅は小さく抑えられやすいです。
理由④ 国民年金は「最低保障的な性格」が強い
国民年金は、制度上「最低限の生活保障」を担う役割が強いため、
- 急激に下げると生活困難者が増える
- 政策的にも大きく下げにくい
という背景があります。
厚生年金は「報酬比例」であり、政策的にも調整しやすい部分が大きいです。
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